設計事務所と管理業務

 

「手抜きや、欠陥をなくすには、設計事務所に管理を委託すると良い」
いろいろなところでこんな事を書いてあるのを目にしますね。
たしかに、設計事務所の管理が入れば、現場の者もそれなりに緊張して、良い仕事が出来ると思います。また、仕上げ材や設備器具の色の決定など細かな打ち合わせをやってもらえるので、工務店も工事に専念出来ます。ある程度費用は余計にかかりますが、それだけの価値はあると思います。
ただし、これは、建築主、設計事務所、工務店が互いの立場を理解しあい理想的な信頼関係が持てた場合に限ります。管理が入ってもうまくいかない場合もたくさんあります。どのような問題が起きるかいくつかの例を紹介しましょう。

 

1.工務店側に問題がある場合

工事をする工務店がよく知らないところの場合、管理してもらえば確かに安心ですよね。設計事務所が管理する場合、最低1週間に1回は現場へ行かないといけないことになっています。逆に言えば1週間に1回顔を出すだけなんですよね。その間に手抜きの下地工事をして、仕上げ材で隠してしまえばバレない訳です。また、設計事務所の方が忙しいと、何も知らない事務所の見習いを現場へよこす場合も多いです。
実際、私もこんな経験をしました。施主は私の親戚で、同時に2つの物件の工事がありました。設計・管理は同一の設計事務所。ひとつは私のところが施工し、もう一方は設計事務所の紹介の業者でした。私の方はクレームもなく無事完了しましたが、もう一方は工事中からクレーム発生、工事完了前に業者が倒産、夜逃げなんて事態になりました。保証人に大きな会社が付いていたから工事が完了したものの後味の悪いことになってしまいました。
何よりも良い工務店選びが大切と確信する一件でした
  

2.設計事務所に問題がある場合

こちらについてはいろいろお伝えしたいことがあります。何せ私も工務店側ですから(笑)

a.設計事務所の勘違い
管理を引き受けた設計事務所は設計図書と相違なく工事出来ているか建築主に代わって監視する仕事をします。もし、問題があれば建築主に報告しなければなりません。
つまり、それだけの権限しかないわけです。「施主の代理=施主と同等の権限」と勘違いしている人があまりにも多いと思います。設計事務所は工務店より上の立場ではありません。建築主の下で工務店と同等の立場であるはずなんです。そのような勘違いが工務店や職人の反感を買い全体がぎくしゃくすることが多いような気がします。

b.無能な設計事務所
実際いるんです。何も知らないヤツが。特にデザインで名を売っている人たちに多いのですが、建物の構造について知らないとか、細部の収まりについて知らないとか・・・。それはそれで構わないんです。万能な人間なんていないんだから。ただ、自分の欠点とか不得手なものは自覚してそういうことには謙虚になってなってもらいたいんですよね。何でも自分が一番だと威張っているとそのうち酷い目に遭うと思います。
また、コストに関して全く気に掛けない設計事務所もたくさんいます。自分は良い材料や多くの手間を掛けて良い建物が出来れば満足でしょうが、そのお金は誰が出すんですか?建築主に追加出させるんですか?工務店に赤字でも我慢しろと言うんですか?限られた予算内で良い物を作る努力をしない設計事務所は無能と断言します。

c.設計と管理は別物
普通、管理は設計した事務所がします。ただ、これについては最近疑問を持つようになってきました。確かに設計した人が管理するのが自然ですが、これだと設計事務所に甘えが生じるんです。設計図が不完全でも工事中に自分で補足説明すればよいとか、分かり難い図面でも自分が口頭で説明すれば良いとか、それは設計事務所の手抜きなんですよ。
契約前、見積の時点で完全な図面が必要なんです。でなきゃ見積もり出来ませんよね。それ以降変更や追加があれば当然追加料金が発生します。着工後は建築主の意志で追加や変更がでない限り契約書通りで工事を進めないと収集が付かなくなってしまいます。
もちろん完全な設計図を書くことは困難です。ただ、それを目指して努力する姿勢がなければいけません。
可能なら管理は第3者の別の設計事務所に委託出来ると完璧でしょうかね。
信頼出来る人が条件ですけど。
 

3.まとめ

「良い工務店」を探すのと同様に、「良い設計事務所」を探すのもとても難しい事を知ってください。管理を付ければ安心と簡単に決めつけないで、良い業者を見分ける目を鍛えてください。その方法は別コンテンツでお伝えしたいと思います。
 

 

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大工のとうちゃん
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更新日 : 2005/10/01 .